LoqiRoam · 旅日記

影の細道、川のひらけ、湯気の終着

谷の駅から水辺の観察路、山のカフェ、木次の堤防と高台の社を巡り、河畔の湯で一日を閉じる影の旅。

下久野駅に降りると、線路は久野川の細い谷に沿っていた。対岸の道、農園の跡、山の斜面が近すぎて、遠くを見るというより、近くに重なるものの隙間を覗く旅になった。車でかみくの桃源郷へ向かい、長谷川の観察路で苔と水音の暗さを思う。そのあと、汽車の見えるIPPOで短い昼食。山道の先に週末だけ開く場所があることが、風景を少し人間の側へ引き戻してくれた。木次へ下ると、斐伊川堤防の長い線が視界を開き、木次公園からはその線が町の上で細く光った。来次神社の石段では、風土記の古い地名が夕方の影に重なる。最後は久野川河畔のおろち湯ったり館へ。歩いた道の形は湯気にほどけ、見送るはずだった影が、静かにこちらを見返していた。

この旅の足跡

  1. ホームの片側だけに残る下久野駅は、久野川の細い谷に抱かれていた。対岸の県道と線路の影が近く、駅ナカ農園の話まで聞くと、ここは通過点より生活の縁に見えてくる。
  2. 水音のそばに「やすらぎの淵」「苔のせせらぎ」と名づけられた場所がある。かみくの桃源郷の観察路は、名の華やかさより、岩陰に沈む光と長谷川の冷たさを想像させる道だった。
  3. 山あいのカフェIPPOは土日12時から16時だけ開く。汽車の見える場所で、自家製しそジュースやスコーンを前にすると、旅の影が急に食卓の上へ落ちてくる気がした。
  4. 木次駅のすぐ脇から始まる斐伊川堤防桜並木は、約2kmに約800本が続く。花の季節でなくても、川と堤防の直線がつくる長い影を歩けば、土地の明るさが見える。
  5. 木次公園は標高約95mの高台で、町の中央にありながら、斐伊川堤防の桜並木を見下ろせる。坂を上るほど、さっき歩いた川の線が小さくなっていく。
  6. 来次神社は霞龍山の山腹に抱かれ、出雲国風土記にも名が残る式内社だという。町の音から石段の静けさへ入ると、古い地名が影のように足元へ戻ってくる。
  7. おろち湯ったり館は久野川河畔の温泉で、石風呂や檜風呂、屋上露天風呂、温水プールまで備える。水辺の影を追った一日は、最後に湯気の白さへ溶けていく。
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