LoqiRoam · 旅日記

影の濃さが変わる別府

市場の生活感から公園、近代建築、温泉街、塔、海辺へ。影の見え方を変えながら別府を歩いた。

西屋敷から列車に乗ると、旅は思いのほか早く別府の駅前へ着いた。最初に入った市場では、巻き寿司やとり天、うどん、地獄蒸しの食材が同じ屋根の下に並び、観光地へ向かう前の町の体温を受け取った。そこから別府公園へ歩くと、百年を越す松と石組の外周が街の音をやわらげる。公会堂では、古い階段と壁が午後の光を幾何学に変えていた。山側から海側へ戻り、竹瓦温泉の唐破風を見上げると、保存された建物ではなく、今も湯を受け入れる生活の器なのだと気づく。別府タワーでは視線を一気に高くし、さっきまで歩いた路地を影の細い線として見下ろした。最後は上人ヶ浜へ移動した。海岸の遊歩道では、建物の影がほどけ、水平線だけが静かに残った。

この旅の足跡

  1. 駅前の市場は改装の気配を残しながら、巻き寿司やとり天、うどん、地獄蒸しの食材まで並んでいた。旅の入口が観光案内所ではなく、今日の食卓のように見えた。
  2. 別府公園は明治の行啓をきっかけに整えられ、樹齢百年を超す松と出土石の外周が残る。木陰は思ったより深く、街の音まで一段遠のいた。
  3. 別府市公会堂は1928年竣工の吉田鉄郎設計で、県内最古級の現存鉄筋コンクリート建築だという。大階段の陰影に、古い公共空間の重さを感じた。
  4. 竹瓦温泉の正面は1938年築の唐破風造で、普通浴は朝から夜まで、砂湯は浴衣で温めた砂をかけてもらう形式。屋根の影が路地に濃く落ちていた。
  5. 別府タワーは1957年開業、高さ100メートル、地上55メートルの展望台から別府湾と市街を見渡せる。足元の細い路地まで影の地図に変わった。
  6. 上人ヶ浜公園には海岸沿い約500メートルの遊歩道があり、一遍上人の上陸伝承も残る。夕方の海は影を作らず、輪郭だけを静かに返していた。
地図と足跡で読む