LoqiRoam · 旅日記
池田の余白は、歩くほど広がった
旧街道の商家、使い直された交流施設、酒蔵、水辺、駅前の食卓をつなぐ池田歩き。
阿波池田駅を出たとき、今日は古い町を少し歩けば十分だと思っていた。けれど、うだつの家で防火壁が商家の誇りにもなっていたと知ると、軒先の一つ一つが急に語り始めた。真鍋屋では、古い家が保存されるだけでなく、野菜の食堂や中庭として今の人に使われている。その切り替わりが気持ちよくて、町の歴史は展示ケースの中だけにないのだと思った。三芳菊酒造では、創業から続く酒造りと地元の酒米の話に耳を傾け、山あいの暮らしが発酵という時間を持っていることに気づく。細い通りを抜けて池田ダム湖畔へ出ると、建物の密度が水面の広さにほどけた。最後は駅前のへそっ子公園を通り、四国の食材を使う店で一息。出発した場所へ戻ったのに、駅前の風景まで少し立体的に見える。今日集めたのは、うだつの影、水辺の余白、そして食卓に戻る町の味だった。
この旅の足跡
- 屋根の上のうだつは防火壁であり、商家の財力を示す意匠でもあった。古い通りなのに、軒下の風だけは今の町のものだ。静けさの中で、昔の繁盛ぶりを少し想像した。
- 旧商家を改修した真鍋屋には、野菜が主役の食堂と開放的な中庭がある。歴史を保存するだけでなく、昼の町に使い直しているところが面白い。
- 三芳菊酒造は1896年創業で、地元の酒米や池田高校との銘柄も手がけている。酒蔵の話を聞くと、山の町の産業は景色の奥で今も発酵している。
- 池田ダムの周辺には親水護岸やイベント広場が整備され、湖畔が町の新しい名所になっている。細い通りのあとに水面が現れると、歩幅までゆるむ。
- 駅隣のへそっ子公園は線路沿いに細長く伸び、列車を待つ時間にも町の気配を拾える。旅の終わりに戻ってくると、出発した場所が少し違って見えた。
- heso salonは駅から徒歩1分で、四国の食材を中心に昼から夜まで営業している。最後に土地の味へ戻ると、町歩きの断片が一つの夕食にまとまった。